先日、江ノ電の資料を漁っていたら、
とんでもないものを手に入れてしまいました…。

橋梁図面張り合わせ0001

 
江ノ電の境川橋梁の図面です。


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要するに、明治時代の鵠沼の鉄橋です。
この橋は1980年代に河川工事の一環で護岸とともに高いところにかけ直されるのですが、

この図面は先代のものではなく、さらに前の木造橋のものです。

※橋梁の写真は江ノ電公式サイトに2枚掲載されているのでご覧ください。
①続行運転で走行する電車の写真
https://www.enoden.co.jp/train/museum/memoirs/chapter-9/story-1/
大正後期と言われていますが、続行運転やってるのでちょっと疑問が残ります

②大正9年水害復旧時の写真

大正9年の水害復旧の写真が残っているので、それ以降に、
恐らくは関東大震災後、タンコロの導入に備えて鋼橋に架け替えられたのではないかなと。

とにかく江ノ電は、
戦後すぐの1950年に本社火災で歴史的な資料をほぼすべて焼失していて、
戦前のことってわからないことだらけなんですよ。

正直こんな古いものが現存すると思っていなかったんで、
ただただビックリでした。
現存した可能性として、
①実はこの江ノ島電気鉄道というのは今の江ノ島電鉄とは別会社の解散した会社で、
戦前のうちに使われなくなった資料が流れたケース

②江ノ電がどこかに橋の建設を発注し、建設会社の人間が保管していた図面

のどちらかだと思っていて、②かな・・・?とか。
古書店から出てきた書類なのでその辺のルーツが負えないのが悔しいですね。
まぁ、出どころが分かったとしても当の本人を知る人が生きていないのかもしれないですが。



あらためて、図面を見てみましょう。
縮尺は40分の1とあります。

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橋梁には略鎌と呼ばれる継手の技報が使われています。

この時代の橋の写真は1枚ほどしか見たことがないので、
こうやって図面で見ることが出来るのはとても大きな学びがあると言えるでしょう。


この縮尺を計るうえでとても重要なのが、線路の幅。
これは118年経った今でも変わっていませんからね。
よくみると、3・5の文字。

・・・ヤードポンド法ではないですか!!

これが現代でいうメートル法の1067mmに通じるわけです。

江ノ電はドイツ・シーメンスの技術を使って電気部品を作ったのですが、
土木に関してもすでにヤードポンド法を用いた設計をしていたんですね。

木造で尺貫法を使ったものが戦後まで残ったことを考えると、
なんというか、かなり先進的・・・。

図面に記載されている、右岸、左岸というのは、
河口を向いたときに右か左かで岸の位置を決めるもので、
ここでは右岸=藤沢方面 左岸=鎌倉方面の意と読み替えてご活用ください。

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右岸はえぐれていて、左岸は堆積してなだらか。
これはつまり、向かって左の方にカーブしているということですね。
この川、昔は結構蛇行していたのだなということが分かります。

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みたところ、線路の周りは板が貼られ、併用軌道のようになってたようですね。

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コレだけの図面を手書きで書ける人って凄いですよね。


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退避所も作られています。
電車と鉢合わせしたら飛び込んだみたいな逸話も聞きますが、
当時はまだ見通しがよく、電車の速度も速くなかったのかもしれませんね。



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英語で書かれた部分は筆記体が読めなかったので、
GoogleのOCR技術を活用して解読。

Designed and written
by
R.Wakameda
assisted by
K.Kobayashi
Feburary 1902


図面の作成は1902年2月。
9月の開業を半年前に控えた時期に作られたものです。

作った人物の名前として、
若目田、小林という名字が読み取れますが、
江ノ電の社史などを読んでもこの人物の名前は見つかりません。
若目田という名字は珍しく、栃木県にルーツがあるようで、
江ノ電というよりは橋梁建設の技術者が作図したものではないかと考えていますが、
当時の鉄道土木がどのようなプロセスで行われていたのかを学ぶ必要があります。
本当は、こういうのに詳しい専門家と一緒にあれこれ見ていければいいのですが…
とりあえず資料をデータ化して公開することで、
まずは多くの方にこの図面を読んでもらおうと思いました。

ホントは寄贈したほうがいいのでは、みたいな話は聞いたんですけど、
どこに渡すかってなったときに、寄贈できる博物館のような施設がここら辺にはないんですよね。

沿線新聞社で一冊本を書いて世にバラまくのが
一番正しいやり方なんじゃないかとすら思うよね()
いつかあそこで一冊本を書くのが夢・・・。