10月3日、藤沢市の八部公園(はっぺこうえん)こと鵠沼運動公園でミニSLの運転会があるとのことで見に行ってきました。

八部公園は引地川に面して鵠沼と辻堂の境目にある公園で、小田急クハ2658でおなじみ辻堂海浜公園といいなんともアクセスが難しいスポットだなと感じるところがあるので、ここでアクセス情報を説明しておきます。

電車で行くなら、小田急線の鵠沼海岸駅から商店街を西にまっすぐ歩くのが手っ取り早いです。
道が狭いわりに車が多く、小さな子供を連れ歩く際は注意が必要です。

バスで行くなら、藤沢駅または辻堂駅から江ノ電バスが便利です。
藤沢駅から江ノ電バスF9鵠沼車庫前行き(30分間隔)に乗って、終点一つ手前のバス停「鵠沼運動公園前」で下車します。


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藤沢駅の北口、さいか屋前の3番乗り場から発車するので間違えないようにしましょう。


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北口から西へ向かい、小田急の築堤をくぐり、
JRを跨いで藤沢警察署まで抜けるまでは箱根駅伝のコースになっていて、
そこから分岐して鵠沼海岸方面に走る路線です。
所要時間10分ですが、藤沢市街地から海に向かう道なので日曜日は時間帯によって観光渋滞が発生します。

もしも、バスに乗るのが好きなのであれば、
藤沢駅南口からF5高根行きで終点「高根」まで乗って、そこから歩くのもありかと思います。


運行本数は30分に1本、所要時間は12分です。

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この路線は小田急線の踏切を渡る珍しいバスです。
なかなか乗る機会もないと思いますし、狭小路線ゆえまぁ渋滞するってことはないと思うので。
高根からの徒歩ルートは小田急鵠沼海岸駅と変わりありません。


辻堂駅からは、J3鵠沼車庫前行き(20分間隔)で終点「鵠沼車庫前」で下車して歩くのがよいでしょう。
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団地や大学へのアクセス路線で藤沢発より本数が多いのが魅力ですが、辻堂駅から浜見山を通り134号線に抜けるため、日中は近隣ショッピングモールへのお買物渋滞や浜見山交差点での渋滞の影響を受けがちで、これも道路状況をよく見て使いましょう。

辻堂駅の乗り場は、南口から一番離れた3番乗り場です。
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辻堂には他にJ4系統という、辻堂大平台から鵠沼運動公園前を通って鵠沼車庫前に行く路線もありますが、本数が少なく、ミニSL運転会の時間に走るのは辻堂13時発だけとなっています。(むしろミニSLのために残っているように見える?)


道路の渋滞情報や、江ノ電バスナビを見て運行情報を確認して使い分けるとよいでしょう。




さてさて、行くと運転会が始まっていました。

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この日はさっそく江ノ電305が運用入りしていました。

実物はすっかり車庫にこもったり雨降ったりと、ハズレ続きなだけに有難かったです。


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実車同様の紺サボをつけて走行。

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なかなか松の木に囲まれた空間で雲も多く、撮影は難しかったですね。
(そもそもミニ列車は撮影のために走っているわけではないのだけれど)

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電車のもう1本は江ノ電1000形。


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こちらはしおかぜ号のHMをつけて走っていました。

10月の運転会は毎年ちょっと特別で、
SLを加えた3編成で運行していました。

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やかんで給水して発車の準備中のSL1号機。
しおかぜ号のHMが掲出されています。
10月の運転会では、SL列車の増結と重連運転も行われます。

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黒い1号の後ろにもう一両機関車が連結されています。
赤い機関車で、同じ小川精機製T-5、車体には2の番号があります。

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通常最後尾に連結される車掌車が編成中間に1両挟まって、さらにうしろに客車が連結されています。

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そして最後尾にも車掌車が連結されています。
旅客専務車掌という札がなんともいいですね。
185系グリーン車の乗務員室などに掲示されていたものです。

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SL列車を踏切から眺めてみましょう。

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重連運転ではそれぞれに機関士が乗って運転しています。

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ただこの2両、同じメーカーとはいえ出自や組み立て時期が異なるようで、
よく見ると煙の出方など違っています。


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1号機の機関士がボイラーに注水するためのポンプを頻繁に動かしていたり、
2号機の方が安全弁から蒸気を吹き出す(圧力が高まる)のが早かったり。

蒸気機関車に癖があるというエピソードを書籍で散見しますが、本当なのだと実感できましたました。

さて、今回の運転会の特徴はミニSLの走行だけではありませんでした。

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SL広場に保存展示されているC11 245はライトを点灯し、キャブを公開していました。
毎年10月は鉄道の日が近いということで公開されているようですね。
カンパ箱があったのでちょいと入れて内部を見学。

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こちらがそのキャブの中です!
もっと早く全周カメラを買っておけばよかったなぁ。

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機関助士側からボイラー全体を眺めます。
丸く出っ張ったものがボイラーで、蒸気機関車の特徴的に円筒系の物体そのものが運転台に食い込んでいるような構造をしています。
要するに横置きの圧力鍋です。

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こちらが火室につながる投炭口です。

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なんと2段階に開けることが出来るんですね。


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こちらが機関士席。
右上から生えている、白い取手のナナメに生えている棒が、加減弁というハンドルで、
これを操作することでマスコンの役割をします。
原理的には、SLを動かすためのピストンシリンダーに入れる蒸気の量を調節するものです。

画面中央、ぐるぐる回るようになっている白い取手が2つ付いたハンドルは逆転器と言い、
前進後進だけでなく、自転車でいう変速機能のような役割も持っています。
右に見切れているのがブレーキで、ハンドルが2本あります。
上が単弁といい機関車だけにかかるブレーキ、
下が自弁という後ろの貨車や客車など列車全体にもかかるブレーキです。

客貨車列車は自動連結器を使用しているので、連結器の隙間で連結間隔を縮めたり伸ばしたりできます。
この2種類のブレーキを使い分け、停止位置を調節することで、
客車の衝動を無くして乗り心地をよくしたり、
あるいは重たい貨車を引き出すときにかかる一時的な力を軽減することが可能です。


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速度計もついています。
この速度計のメカニズムはアナログで非常に面白いです。

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速度計の真下に回転軸がついていて、
それが継手でつながっています。

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継手なんと車輪を動かす連結棒に取り付けられているのです!

推測ですが、車輪の回転速度を速度計の回転軸に伝えると、
速度計の中身が発電機になっていて、電圧計の針をつかって速度を表示しているのかと思います。

↓この辺が詳しいかと思います

コイルを横切る磁力線の本数が増えたり減ったりすると電流が発生することは、小学生の理科で習うと思います。
コイルの磁束密度の変化、つまりコイルが磁力線と平行になったり垂直になったりを急に繰り返すほど、発電する電圧(誘導起電力)が大きくなります。
つまり回転が速くなるほど電圧が上がるので、電圧を測れば速度が分かるわけです。

この仕組み、いろいろ調べたら現役のC11325やC11207で未だに使われている機構のようです。


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中央部にはボイラー圧力を示す計器が並びます。
水を沸かすと水蒸気になり、その体積は1700倍になりますが、
水蒸気でピストンを動かして車輪を回すと、それだけ蒸気は排出されて圧力が減ります。
この圧力を高める方法は、水を沸かして水蒸気を作り続けることで、
この圧力を見て火を調節したり、加減弁を調節したりしたわけですね。

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画面中央の金色の透明のものはボイラーの水位計、
右の水位計の右にある管は水槽からボイラーに水を入れる注水器のハンドルのようです。
これ、流体の力を利用した弁装置で私も仕組みがいまいちわかっていません。

今の私の理解では、
ボイラーの蒸気を噴射する弁の中に水槽の水を与えると、
液体の水が噴射する蒸気の流れに乗って注水器とボイラーを繋ぐ弁に打ち当てられ、
次第にボイラー圧力を超える圧力になってボイラー内に流入する、という仕組みらしい。
注水器とかインジェクターとか呼ぶのでもう少し調べてみたいと思います。

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圧力計の下にはバルブが並びますが、
これらはボイラーからの蒸気を走行以外の機能に使うためのハンドルのようです。

蒸気機関車は、運行に使うありとあらゆるエネルギーをこのボイラーの蒸気によって賄っています。
車輪を動かすのに使わないタイミングにこの蒸気を別の目的に活用しているんですね。

たとえば、空気圧縮機(コンプレッサ)
電車ではモーターを使ってドゥルルルルルと回すコンプレッサーも、
蒸気機関車の場合は電気ではなく蒸気の力で動かします。

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これが蒸気機関車のコンプレッサーです。
蒸気をプシュープシューと吐く音と主に、ガッチャンガッチャンと上下に動作してブレーキ用の空気を貯めます。
駅で停車中(=蒸気を使わない時)にやっている姿を見ることもあるのではないでしょうか。

他にも、蒸気機関車特有の装備として、蒸気暖房という装備があります。
昔の客車列車では、機関車の熱い蒸気を客車に送り込んで暖房として使用していました。

旧型客車や、JR北海道の14系(東武や大井川に渡ったもの)には蒸気暖房のための管が装備されています。50系客車にも装備されているので、国鉄時代の動画とかには出てくるんじゃないでしょうか。
またこの後に登場する電気機関車やディーゼル機関車には、蒸気暖房を使うためにわざわざ蒸気発生器(SG)という装置を設置しているものもあります。EF58がデッキ付き機関車から大型化したのは、このSGを置くスペースを置くためと言われています。
現在の、たとえばEF65なんかは蒸気暖房に代わり電気暖房を使っているので、SGは装備していません。

ほかにヘッドライトをつけるための発電機なども蒸気で賄っているはずです。
キャブのすぐ前についているのですが、写真を撮り損ねました。別の機会に。
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参考までに、大井川鉄道C10の画像を。
キャブの前についている円筒形の発電機と、
あと右側コンプレッサも動いているのが分かりますかね?



これらの蒸気を使う装置へ、ボイラーの蒸気を供給するための弁ということになります。



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こちらは機関助士(助手じゃないらしい)席です。
特に操作機器はなく、どちらかというと機関士の死角となる右側の監視用の窓ですね。
ほかには、給水弁や投炭が仕事です。


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側面からSLのコンソールをながめてみます。
本当にたくさんの弁がありますが、
調べてみるとちゃんと意味があって設置されているものです。
これを頭に叩き込んで、というより体で覚えて操作していくのですね。

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そしてミニ列車はいったん終了。

その後、ライトアップ運転という延長運転の準備が始まりました。


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電車は三陸鉄道に車両交換。

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機関車は1号機の単機に変更されました。

ここの信号は信号係が手動で動かしているのですが本当によくできています。

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次第に日が傾いてきます。
SL広場も通常は早い時間に閉まってしまうので、
このような風景は貴重ですね。

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空も薄暮からあっという間に暗くなり、

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夜汽車の雰囲気になっていきます。

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大井工場謹製のヘッドマークがあたたかい明りに照らされます。


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SLはライトをつけて夜間運転を続けます。


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白い車体はカメラの露出的にもとても撮影しやすいです。

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最後の列車が走ると、
この日運営に携わった子供たちを乗せた団体臨時列車が走り、終了となりました。


20年以上藤沢に住んでいましたが、こんなことやっているとは知りませんでした・・・。

一度C11のキャブは見せてもらった記憶はあるんですが、
当時は蒸気機関車の運転席を見ても石炭をくべる以外のことは分かりませんでしたね。

あれから10年。いろいろ勉強しました・・・。
きっとここでSLを触っているちびっこも、20年後はこういう大人になっているんでしょうか(ぇ)

運営に携わった皆様、お疲れさまでした。