箱根に行ってきました。
11月13日に箱根登山ケーブルカーのバックヤードツアー、
11月14日に十国峠ケーブルカーのバックヤードツアーがあるとのことで見に行ってきたのです。

いつ最後になるかもわからない赤い1000形です。

この日の箱根は、
もしツアなどテレビで仙石原が取り上げられたことで大混雑。
朝から塔の沢で渋滞しておりました。
まずはフリーパスを購入しますが、
買う切符によって乗れる、乗れない乗り物があります。
悩んだ結果がこれ。

箱根フリーパス
箱根旅助け
両方を8000円で購入。
これで2日間、箱根を走るほぼ全ての乗り物に乗ることができます。
小田急は箱根の周遊切符を再編しエリアごとに最適化した切符を発行していますが、
値段的には微妙で、渋滞や混雑によるコンチプランを考えると一番高いの買っても大した差額にはならないです。
小田急小田原駅の出札口はいつも不慣れな観光客でもみくちゃになっていてとんでもなく待たされるので、フリーパスは藤沢の小田急トラベルで購入していたのですが、9月に閉店してしまった関係で発行不可に。
ここは一度小田原駅を出て、箱根登山バスの小田原案内所でチケットを購入。隣の伊豆箱根バスの案内所で旅助けを購入し、チケット2枚をサクッと購入できました!
伊豆箱根バスは渋滞で使い物にならないかもしれないという説明を受けます。運行情報を見て切符を売ってくれる人ってありがたいですね。
まぁ渋滞にハマったらそれは私の能力不足なので、同意して切符を購入します。
登山電車は満員でもみくちゃになり、
ケーブルカーも混雑で1本やり過ごす状態。
ツアー出発ギリギリに到着しました…。


ヘルメットをもらいます。

シールを貼っていざ出発!

写真は撮らせてもらったのですが、ここではアップせず、
今回は小田急グループのTwitter写真を引用して掲載したいと思います。
内部は以下の写真のようになっています。
箱根ナビ@hakone_navi鋼索くんです!
11月13日(土)、11月14日(日)の早雲山駅バックヤードツアーですが、大変好評です!電子予約チケットがすでに14日分がソールドアウト!13日も残りわずかです!
https://t.co/OOdNNJYxNV… https://t.co/xVTDmOQhcL2021/11/07 14:11:28
箱根登山ケーブルカーの巻上機です。
左から原動滑車、減速機、等速機、電動機と並んでいます。
三相交流電動機は三菱電機製、
2台が並列に並んでいて、等速機という歯車箱に繋がっています。
等速機の歯車によって、故障時には即時に正副系を切り替えられるようになっているそうです。
この並列に、というのが箱根登山ケーブルカーのポイントで、日立製の十国峠ケーブルカーとは異なる点です。
御岳登山ケーブルカーも非常に似た機械室をしているのですが、電動機の設置方法が違うようですね。
等速機の先に減速機という歯車装置があって、これで原動滑車の回転数をゆっくりにしています。
ケーブルは原動滑車と従動滑車に複数回巻きつけられていました。
車両の床下にも3回半巻き付けられて摩擦で固定されているそうです。
鋼索くんです!
「箱根登山ケーブルカー開業 100 周年キャンペーン」第3弾のお知らせです!
グルメ×芸術×ケーブルカー秋のTOZAN まつり!の開催!
11/13(土)・14(日)沿線グルメフォトラリー、写真展、バックヤードツアーなど盛り沢山です!
詳細はこちら↓https://t.co/s0GyAUxPWQ#100周年 #イベント pic.twitter.com/L5TmNzqWfN— 箱根ナビ (@hakone_navi) November 2, 2021
逆のアングル、左のヒダのある筒が電動機、その隣が等速機です。
等速機と減速機の繋ぎは黄色い継手ですが、カルダン駆動の継手のようなもので繋がっていました。
原動滑車が車体から受ける衝撃を吸収するためのものでしょうか?
ブレーキにはディスクブレーキを使用していて、常用ブレーキは歯車装置についています。
画像中央下にある青い小箱がそのブレーキ関係の機器のようです。
さらに原動滑車に外側に大きなブレーキディスクがついていて、写真後方に5つほどのブレーキシューがあります。
地上レベルのブレーキは二重化されています。(車両にもブレーキがあるので三重構造になっています)
車両のブレーキは、ケーブルの切断や速度オーバー、車両からの非常停止の他、連結が外れた場合でもブレーキがかかると資料に説明されていました。
ケーブルカーの連結は棒連結器で行われていて、万が一連結器が破損したときのためにさらにケーブルでつないでいます。
ここでロープの仕組みや車輪の構造などを、
ケーブルカーの模型を使ってわかりやすく解説してくれました。
背後の上層階にある運転席は全てボタン操作で、運行距離の長い箱根登山ケーブルカーではすべての駅・車両にカメラが付いていて運転室のモニタから一元監視できるようになっていました。
しかし車内から外の様子を監視することは難しいので、乗務員が監視し、何かあれば非常停止の指示を出せるようです。
ケーブルカーは大層な仕掛けですが、原理的にはエレベータと変わりがないので、社内資格を持つ係員がボタン操作で運転するそうです。
お土産にクリアファイルや車両図面なども頂き大満足の見学会でした。
この資料を読んでいて面白いなと思った点は、
このケーブルカーがマルチベンダ化していることです。
ケーブルカーと言えば日本においては日立製作所が割と強くて、
この後紹介する十国峠ケーブルカーや、大山ケーブルカーも日立製。
戦後敷設された箱根登山ケーブルカーも日立製だったのですが、
その後箱根登山鉄道の3連化などの輸送力増強によってケーブルカーが2両連結になる際、
スイスのフォン・ロールという会社の設備に更新されました。
そして2020年、京王重機整備の手で車体更新されたのですが、どうやら足回りは流用らしく、
日立製のケーブルカーとは仕組みが異なる点が多いのです。
例えば車両側の非常停止の方式で、
ケーブルが切断して張力を失ったとき、いくつか非常停止の方法があります。
張力がなくなることでフックが外れてバネでブレーキを掛けるテオドアベル式、
張力がなくなることで車軸とブレーキレバーのクラッチが繋がってブレーキがかかるギーセライベルン式などがあります。
両者の違いは日立評論1956年3月号に詳しく説明されているのでそちらを見ていただくとして、
箱根登山ケーブルカーはギーセライベルン式を採用しているというのです。
しかも(油圧制御)と注釈があるのですが、
ギーセライベルン式って重力で制御するブレーキでは?
参加後気になって、ケーブルカーについて勉強しようとすればするほど、謎が増えてきます。
輸入品ゆえに情報があまり出ていないのもあるのかもしれませんが。
もしかすると、特許データベースを漁れば何か得られるでしょうか?
と思ったら、ビンゴ・・・!
日本ケーブルが2002年に出願していた特許論文の中に記載がありました。
ギーセライベルン式は車輪の回転力をブレーキテコの操作に使うので、
下り方向に滑走した場合のみ自動使用されます。
係員が手動で非常制動を使用するときには、油圧でこのブレーキシューを押し出して止めるためにこのような記載をしているようです。
あーーすっきりした。

駅では顔出しパネルが展示されていました。

ドアの開閉をして、発車の承認を運転席に送る機能が再現されていました。

この日の早雲山は天気が良く、
大文字と相模湾を眺めることができました。

ここからロープウェイで大涌谷へ…
とは行かないことにしました。
ケーブルカーの写真が一枚もないでしょう?
実はこの日、登山電車はギチギチ、ケーブルカーは満員で乗車規制が掛かるほどの混雑で、カメラを向ける余裕がなかったのです。
そして宮城野方面へ小涌谷から乗り換えるわけでもなく、早雲山までやってくる彼らの目的地、
それは間違いなく大涌谷……!
そこにノコノコ行くのは、自殺行為というもの…。

そこで、ここからは

伊豆箱根バスで芦ノ湖を目指します!!
小田原駅で言われたこと。
「芦ノ湖まで通常1時間のところ、倍の時間がかかっている」
しかしGoogleの渋滞情報を見ると、そのボトルネックは箱根湯本までということがわかりました。
そして強い味方が、「伊豆箱根バスナビ」!!
いける……!

きたぁぁぁぁぁぁ!!!
バスは30分間隔なので、1時間遅れだとしたらちょうどぴったりなんですかね。
大涌谷の北側を回り込んで芦ノ湖の湖尻(桃源台)に向かいます。

バスは大涌谷を作る冠ヶ岳の斜面を切り開いたであろうのクネクネした道をプロのドラテクでガンガン進みます。
こんな崖っぷち怖いですわ…絶対運転したくない…。
火山ガスで変色した木々に大涌谷を感じます。
ここで卵茹でて食おうとした最初の人類、なかなかクレイジーですよね。
この日は早雲山駅の時点ですでに硫黄臭が強く、きつい環境だったなと感じています。

通常バスは県道を離れ、大涌谷まで行くのですが、
この日は混雑が見込まれるため大涌谷に入らず道路を直行します。

バスはロープウェイと並行して走りますが、ロープウェイの駅からは少し歩きます。
まぁそんな使い方する人いないでしょうからそれでいいんだと思います。

バス停の小屋も趣があっていいですね。
予定では箱根園にそのまま向かうつもりだったのですが、どうやら湖尻から出る観光船に間に合いそう!
ということで湖尻で降ります。
湖尻は伊豆箱根鉄道の観光船とバスターミナルが並んでいます。さすが。
そこでバスを降りようとしたら
先頭で降りる人がICカードのチャージを始めて……
おいーーーーーまてまてまてまて先頭でそれをやらないでくれーーーー
東京湾フェリーでも同じ目に遭ったんですよね……よいこのみんなは小田原駅で5000円チャージしておきましょうね。

慌てて桟橋へ向かい、なんとか船に乗れました。
メダル販売機でメダル買いたかったんだけど……またの機会に。

十国丸という船でした。
伊豆箱根鉄道がスカイラインコースとして整備していた十国峠に因むものでしょう。

湖尻のアヒルさんボートは静かでした。

乗船口の1階デッキです。

船内に入るともやいの展示がありました。
広々としているなと感じます。

操舵室もオープンでよく観察できます。

さぁ、上に上がってみましょう。


2階客室は、というかみんなここにいました。
開放的で見晴らしがいいです。
先日のクイーン芦ノ湖と比較すると、柱や壁が少ないのも特徴的と言えますね。
エレベータなどバリアフリー的な視点で見ると海賊船に軍配が上がりますが。

上のデッキに登ると、ちょうど出港です!


競技場のスタンドのような階段椅子がありました。

海賊船の桃源台港は徒歩5分の立地。湖尻桟橋は影が薄い…。

仙石原の回で紹介した、箱根九頭竜神社の本宮ノ鳥居です。
よく見たら湖に足突っ込んで写真撮ってる人がいますね。
毎月13日の祭礼の日には、この芦ノ湖遊覧船でここに上陸することが出来るそうです。
朝が早いので私には難しそうですがw

追いかけてくるのは箱根海賊船です。

船は静かに進んでいきます。

双胴船ならではの航跡です。

とおくに箱根駒ヶ岳ロープウェイが見えてきました。

巨大な鉄塔で吊るされたケーブルの上を進みます。
交走式と呼ばれるタイプです。
地上構造物が鉄塔だけなので地上への環境負荷を抑えることができるのがロープウェイの魅力ですね。

前方に別の観光船が見えます。

もう一隻。はこね丸とあしのこ丸という船がいるようです。

この船は湖尻と箱根園を往復する船で、
海賊船の航路を離れて箱根園に向かいます。

十国丸の船内にある配置図です。
ここで、伊豆箱根鉄道の箱根開発の歴史を少し振り返りましょう。
ここ箱根では、西武グループの創始者である堤康次郎が経営する箱根土地という不動産業者が、
駿豆鉄道、箱根遊船、大雄山鉄道などを買収して、
西武グループによる移動インフラとリゾート開発を行っていました。
戦後、箱根登山鉄道を傘下にした小田急、五島慶太率いる東急グループとで、
箱根観光の覇権争いをしていた時期がありました。
箱根山戦争と呼ばれるものです。
始めは小田原~芦ノ湖の路線バスの競争がきっかけとなって、競争がエスカレート。
西武の芦ノ湖遊覧船に対抗して小田急の箱根海賊船が登場すると、
伊豆箱根鉄道が保有する有料自動車道路から箱根登山バスを締め出すなど対立が激化していきました。
陸路から締め出された小田急は、箱根ロープウェイを建設し、
湯本から強羅、早雲山、大涌谷を通って桃源台から元箱根に抜ける、
自社の乗り物で箱根を周遊する「箱根ゴールデンコース」を開発します。
いっぽ伊豆箱根鉄道が開発していた観光ルートは「箱根スカイラインコース」と呼ばれ、
小田原から小涌谷、そこから駒ケ岳山頂を抜け、芦ノ湖の箱根園、遊覧船で箱根関所跡を越えて、
十国峠を抜けて熱海まで抜けるコースとなっていました。
度重なる小田急と西武の裁判の中では西武がつよかったのですが、
ビジネスとしてはご存じの通り小田急の箱根ゴールデンコースの圧勝でした。
箱根スカイラインコースは衰退するようになり、西武グループのスキャンダルがとどめを刺します。
小田急と伊豆箱根鉄道が業務提携を始め、その頃から事業整理が進みました。
駒ヶ岳ケーブルカーが2005年に廃止、
駒ヶ岳ロープウェイが2016年にプリンスホテルに事業譲渡、
そして十国峠ケーブルカーも2021年12月に分社化され、2022年に富士急グループへ譲渡されることになりました。
形は残りますが、徐々に崩壊していく箱根スカイラインを史跡として記録しておこうというのが
今回の旅の趣旨だったりするわけです。

富士山が見えてきました。
まもなく、箱根園港に到着です!

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