小田急江ノ島線のダイヤ変更から1週間がたちます。
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私は在宅勤務ですっかり自宅に軟禁状態なんですが、
家族は買い物に出るとまだ慣れない人が居るとか言う話をしてきます。

そして、目のまで電車に逃げられたとか、不便になった……みたいな声もよく聞きます。
しかし、電車の動きを見てみると、ホームに相模大野行・片瀬江ノ島行が並んでいる時間もしっかりあるように見えるのです。

何が違うのか? というのを、小田急時刻表を購入して比較してみることにしました。


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2021年の時刻表はヨドバシや書店ではもう売っていなくて、Amazonがまだ売ってたので買いました。江ノ電のページもあり、コロナで廃止になった鎌倉初の稲終が掲載されていました。
歴史の転換点を見ている二冊だと思います。


さて、では今回の調査について軽く説明しましょう。

【調査の目的】
湘南台・大和方面~片瀬江ノ島方面の電車の接続が、ダイヤ変更によりどう変わったのか、
なるべく手間と時間をかけずに明らかにする。


【調査方法】
平日ダイヤの10時~12時の上り・下り列車の藤沢駅到着・発車時刻を調べ、グラフを作成して、藤沢駅での待機時間を可視化する。

・ダイヤ変更前
藤沢駅に到着するスイッチバック列車の、到着時間ごとの折り返し発車時間を散布図にプロットする。

・ダイヤ変更後
藤沢駅に到着する列車に対して接続する列車の発車までの時間を散布図にプロットする。



【結果】

まずは平日下り(相模大野→片瀬江ノ島)

ダイヤ変更前の様子を見てみましょう。

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ダイヤ変更前の折り返し時間は、平均7分で安定して推移していました。
10:38着、10:47発の各駅停車5163レが例外的に9分待機となっていますが、
これは10:42着、10:45発の特急「えのしま1号」の待ち合わせを行うためです。
その長期停車を埋め合わせるかのように、
後続の各駅停車5165レは10:49着、10:54発と5分で折り返していきますね。
これについて考察してみたいと思います。

ダイヤ変更前の江ノ島線の各駅停車は10分間隔で運行していたので、
藤沢駅に到着した電車がに9分停車してしまうと、
1分後には次の電車が到着してしまうこととなります。
それではマズいので、5165レは相模大野始発の時刻がパターンダイヤより2分遅くなっていて、
さらに藤沢本町停車時点では3分遅く到着するよう時間を稼いでいるのです。

えのしま1号が45分発、その後に5163レが47分に藤沢駅を去ると、
5165レは2分後の49分に藤沢駅に到着します。
で、遅れて到着した分、藤沢駅の折り返し時間を短くして、
ほかのダイヤへの影響を軽減する狙いがあるのだと思われます。


5163レが2番ホームから発車するなら隣の1番ホームに5165レを入れればいい、と思うじゃないですか。
実は快速急行藤沢行3511レというのがこの5165レの真後ろを追いかけていて、
5165レの1分後、10:50に藤沢駅1番ホームに到着します。

なのでこの各停5165レはなんとしても2番ホームに入れる必要があるので、
えのしま号が出たらすぐに5163レを2番ホームから追い出す必要があるのです。

で、忘れちゃいけないのは、下り列車だけでこれだけの大騒ぎなのに、
相模大野行の列車も考えなくてはならないということです。
おそろしいダイヤですね……。

次に、ダイヤ変更前後の比較を行ってみます。

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系統分離後は、片瀬江ノ島方面の運行間隔が10分間隔から12分間隔になったことで、
列車同士の接続はぴったりとはなっていません。
片瀬江ノ島方面への待機時間は最短1分、最長10分、平均すると5分となり、
従来のスイッチバックの7分に比べると、なんと平均的には2分の短縮となっています。

またえのしま1号は廃止となり、新しいえのしま1号が17時台に設定されました。

波打っている待機時間の特徴を読むと、毎時0分~30分の列車は接続が悪く、
30分~0分の列車は比較的短時間で乗り換えができるように見えます。
つまり、藤沢駅でのロスタイムだけを考えると、
片瀬江ノ島の集合時刻を10:30に設定すると藤沢で待たされやすく、
11:00集合にすると待たされにくくなるのではないか、という仮説が立てられます。
もちろん他の複雑な要因が考えられるとは思いますが、ちょっと実験してみたくなりますね。

ちなみに、江ノ電バスで藤沢駅→江の島島内までが、渋滞なければ所要14分と言われているので、
下手に待つくらいならこっちの方が早く江の島に到着できる可能性があります。
これもまた、要検証ですね。



次に平日上り(片瀬江ノ島→相模大野)

こちらもまずはダイヤ改正前から見てみましょう。


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こちらは折返し時刻が波打っているのが特徴的です。
4分と7分を繰り返しているのが分かります。
4分待機の便は藤沢で優等接続をせず、大和で快速急行に抜かれる便、
7分待機の便が藤沢で快速急行をやり過ごし、途中相模大野まで逃げ切る便です。

快速急行が20分に1本のパターンダイヤで走っているので、
各駅停車もこのようなジグザグのパターンダイヤになっているものと思われます。

10:44着・10:51発の各駅停車5168レが4分待機となるところ7分と長く待機しているのが分かります。
これは前述の、10:45発の特急えのしま1号に合わせたものと考えられます。

45分に1番ホーム→江ノ島、
47分に2番ホーム→江ノ島
49分に相模大野→2番ホーム

連続して列車が出入りするため、パターンダイヤ通り47分着・51分発にしてしまうと、
緩急接続に支障をきたします。

そこで、10時台の5168レだけ、片瀬江ノ島を3分早く発車するようになっていて、
通常より3分早く藤沢駅4番ホームに収容して、退避が一通り終わるのを待たせておくのです。
こうしてえのしま号の進路を空けつつ、各駅停車の本数を毎時6本に維持しているんですね。
49分発の5165レの発車後にやっと4番ホームから発車できるようになるので、51分に発車。結果として待機時間が長くなっていたようです。

次に、ダイヤ変更前後の比較を行ってみます。


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こちらも結構波打った時刻になっています。
待機時間の平均値は5分→5分と変わっていないのですが、
その振れ幅は大きくなっています。
2分で乗り換えられる列車が毎時2本、
5分で乗り換えられる列車が毎時2本、
一方で、1分前に発車されて11分待ちぼうけ、みたいなやつも毎時1本あります。
鵠沼から善行とか行くのだとしたら、前後の時間もしっかり調べておいた方がよさそうです。

とはいえ接続というよりは、単に末端の本数が減ったのが一番影響している所だと思います。


【結論】

今回は、スイッチバックの頃と系統分離を比較してみました。
下り方面については各駅停車同士の接続は良くなっていて、上り方面はハズレがでかいもののかなりスムーズに乗り換えられるのではないかと思うところもあります。

ただ、なによりスイッチバックの折り返しに7分もかかっていた事実には驚いてしまいました。

皆さん電車乗ってた時意識していたでしょうか?
「発車までしばらくお待ちください」と言われてスマホを弄ってた時間、
無意識のうちに結構時間を浪費していたんですね。

「接続が悪くなった」というのは、
今まで無意識に過ごしてきた無駄な時間が乗り換えによって顕在化されただけで、
実は藤沢駅の接続は昔からそんなに良くなかったみたいです……。

休日ダイヤや、快速急行との接続など、もっと様々な切り口があるとは思うのですが、
私はそろそろ小田急研究を切り上げて江ノ電に突っ走りたいので、
ざっくりとした調査手法の提示と結果の一例を示す形で調査を終えたいと思います。

最後に、全体のグラフを作成したので見てみましょう。

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到着時間のずれを利用して折り返し時間を見かけ上小さくしているに過ぎないので、
こうしてみると接続に大きな波があるんですね。
やっぱり片瀬ローカルも10分サイクルで走らせてほしいなぁと思ってしまったりしました。

それで両列車を5分ずらして運転したら、全列車5分で乗り換えるようになるのかな、とか。
乗務員も車両もタダじゃないから難しいんだろうけども、なんとかならないものか……。



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そしてこのスイッチバック、
めちゃくちゃ力入れてダイヤ引いてたんだということを今更になって実感しました。
もっと前に学んでいればもっといい記録が残せたろうに、とか思ったりしました。