3月某日。
東京にやってきました。
久々の東京、その目的は、東京都観光汽船。
だいぶ前にクラウドファウンディングにお金を突っ込んでいたのですが、
仕事があまりにも忙しくてリターンを受け取るのを忘れていまして、
年度末に駆け込みで参加することになりました。
親戚の間でふるさと納税の話が出ているので「こんどは何万突っ込んだんだ!」って言われること多いですが、今回は3万円くらいだったかとおもいます。
リターンが魅力的だったというのもあるのですが、
大学生のお金なかったころに浅草や豊洲で水上バスを見かけることがあって、
就職したら乗ってみたいと思っていたものがコロナで潰れてしまうというのはちょっと見ていられなかったんですよね。
あと、この会社の船は子供向けの図巻に掲載されることが多いユニークなもので、
船内を見てみたいという希望もありました。
始めに東京都観光汽船についてざっくりおさらいしましょう。
東京都観光汽船は明治18年(1885年)創業、明治31年(1898年)設立の船会社。
豊洲、お台場海浜公園、日の出桟橋、浜離宮、浅草などを結ぶ水上バス路線を運航しています。
お台場近辺の水上バスにはほかに「東京水辺ライン」という事業者があります。
こちらは災害時のインフラとして利用するという副次的な用途があって東京都が運航するもので、荒川などより広い水域で航路を持っています。
これ、私も最近まで知らなかったのですが、水上バスの勢力図はこうなっていたらしい。
「東京都観光汽船」→東京みやこ観光汽船をルーツとする民間事業者
「東京水辺ライン」→東京都公園協会が防災インフラ兼用として運航する公営事業者
私が学生時代、蔵前橋から眺めていた船は水辺ラインの方だったのかもなぁとか。
外国人の兄ちゃんって橋の上の人にやたら手を振りたがるよね。
とりあえずこっちも手振ってみるんだけどさ。なんでだろうね。
この日は新橋駅からゆりかもめで移動します。
集電レールを眺めながら……。
やってきたのは日の出。
水上橋桟橋がありますね。
戦前からあるという三角屋根の倉庫群。
ゆりかもめの接地軌道が見えました。
車体の電圧を地面にそろえて乗降客が感電しないようにするレールです。
ここはレストラン船なども発着するターミナルで、
むかし来たときははとバスがたくさん並んでいましたが、
この日は閑散としていました。
ターミナルで集合時間まで待ちます。
今回のリターンは、水上バスの操縦席で記念撮影というプラン。
水上バスと言えば我々ですと横浜の海上交通船シーバスが挙げられますが、
なかなか操舵室の中に入ってみることはなかなかないですよね。
コックピット潜入マニアの血が騒いでしまったわけです。
左に停泊しているのが今回見学する「エメラルダス」
右に「ヒミコ」が入港してきました。
社員さん曰く、ヒミコ・ホタルナ・エメラルダスの3姉妹船が日の出に揃うのは珍しいのだとか。
となりには、シンフォニークルーズのクラシカ・モデルナが並びます。
こちらがヒミコ。
小さい頃、「子供の科学」か何かに掲載されていて、凄い船だなと思った記憶があります。
松本零士がデザインした宇宙船。社内でもインパクトが大きかったそうですね。
側面のヒミコロゴが特徴的ですね。最初は何かの落書きかと思ってしまったんですが。
では、エメラルダスの船内に入ります。
広いです!!
ドーム型の船内は白基調で、90年代のCGで作った2010年ってこんな感じのSF世界だったりするよね。
早速船長服を着せてもらい、記念撮影。
そして船の操舵室を見学させてもらうことに。
これがエメラルダスの操舵室です。
コンソールはパネルにライトで示すようになっていて、
左はバラストタンクのコンソール、右にはエンジンや舵など航行装置のスイッチが並びます。
飛行機や電車のようなグラスコックピット(液晶モニタがいっぱい並んでいる感じ)を想像しましたが、
意外にアナログスイッチが多いなと感じます。
そしてなんだかんだ舵輪はやっぱり船らしいスタイル。
椅子に座ってみると、結構背が高いです。
戦闘機みたいですよね。
バラストタンクは青函連絡船のように積載物のバランスをとるもの思っていましたが、
船の喫水を制御する役割も持っているそうです。
というのも、船は水底の深さと上部構造物の抵触を考えて動かねばなりません。
干潮になって水深が足りないと、船底が堆積した土に擦れてしまったり、プロペラが土砂の影響を受けてしまうらしい。
また隅田川にかかる橋をくぐるときにも制約があり特に高さの低い永代橋の通過に支障をきたすことがあるなのだとか。
そこでバラスト水を増やして船の高さを下げたり、
逆にバラスト水を抜いて浮くことで水底にプロペラや船底が抵触しないよう計画して運行するそうです。
船の種類によっても得意不得意があるようで、著しい水位の上下がある日は配船計画にも影響が及ぶとか。陸上交通にはない苦労が伺えます。
機能は備わっていても操船技術について話を伺ってみるといろんな難しさがあるようで、
たとえば橋の中心部は高さがあるものの、多くの船が行き来する中では必ずしも中心部を航行できるとは限らず、他の船にも橋にも気をつけるなど、運航には注意することがたくさんあるようです。
またダイヤのある交通手段ですから、屋形船や貨物船など遅い船を追い越したりすることも必要で、橋と橋の間で抜き切れるか見極めることも必要とか。
たしかに後で実際乗っていると、前方を艀がゆっくり航行してたりしたので、大変だなぁと思いました。
トモは死角になるので、
船体各所に設置されたカメラからモニタを通して参照できるようになっています。
ちなみにこのキャビンの足元についているLEDテープのような照明は色をパソコンのGUI操作で任意に調整でき、
ゲーミングな空間も簡単に設定できるとか。
船上アイドルライブをやったら推し色にどんどん変えられますね!(適当)
さらにコックピットの見学のみならず、船内全般を見学させていただくことに。
水上バスの機関室を覗いてみたりもしました。
キャビンではかなり防音扉がしっかりしているので気づきにくいですが、
推進用と発電用のディーゼルエンジンの2基が回転していると非常に大きな音がします。
写真とかはないけど、ガリガリと轟くエンジンは心が躍りますね。すばらしい。
いっそ防音壁を金網にしてエンジン爆音クルーズとかやったら楽しそうだよね(オタクしか喜ばない)
プロペラは1軸、前後方向の転換はクラッチがあったのでエンジンと繋ぐギアが切り替わるのかな、そしてパワーの変化は回転数の制御で行うようになっていらように見えました。
船内にはカウンターがあり、
カフェやバーとして使えるようです。
今はなかなか難しいけども。
供食設備を使えるチャーター旅行とかできたらどんな遊び方があるでしょうか。一般の人は景色を見ながらダイナーとか酒を飲むとかなんだろうけど。
船尾にはトイレやソファーがあり、1番後ろには丸窓が並びます。
トモの外には消火設備などがあり、海水を汲み上げて放水するポンプなども備わっています。
SFチックですがちゃんと付くべきものは付いているんですね。
船の図面も見せてもらったり。
こんな丸い船なのに底は平たいんだぁ…とか興味津々。
こういう図面がついたガイドブック欲しいーーー!! 船の科学館で売ってるようなやつ…!
そしてデッキに上がります。
この辺りの作りは、ヒミコ・ホタルナ・エメラルダスの3姉妹で異なっています。
ホタルナ・エメラルダスにはデッキがあります。
1番船のヒミコはデザイン重視なところもありデッキはありません。
さて、先ほども説明した通り、隅田川を航行する船は橋の高さを意識する必要があります。
永代橋の高さ制限をクリアするため、支障のある河川ではなんとデッキを閉鎖して、手すりを折り畳む運用になっています。
折り畳むとこんな感じ。
停泊中に係員がせっせと広げたり片付けたりしているようです。
そして高さにまつわるアイテムがもうひとつ。
ウィング!
ダウンフォースとか一切関係なく、飾り羽根のようですが、
ちょっと500系新幹線のパンタグラフみたいですよねw
こちらも東京湾とかで立てていて、
操舵室からボタン操作で動くのだとか。
今回、特別に動作実演をしていただきました!
言われてみないと全然気づかない装備ですが、
気にしてみるとちゃんと動いていることが分かりました。
ヒミコでの実際の使用場面を見ることができましたが、画像はまたの機会に。
エメラルダスを見学していると、隣に「竜馬」が入港してきました。
竜馬は赤い二階建ての船で、1994年就役。
「竜馬」は坂本竜馬からとった名前のようで、ほかに
江戸城無血開城で知られる勝海舟から「海舟」
江戸城を築城した太田道灌から「道灌」
と言った姉妹船があり、松本零士デザインの「ヒミコ」シリーズに対して「偉人型」と呼ばれているんだとか。
今回、せっかくなので…とこちらも見学させて頂くことに。
船内には蒸気船のボイラーをイメージしたオブジェが置かれています。
こちら二階デッキ。
天窓の開放的な屋根の下に、座席が並んでいます。
1階はテーブル席で、飲食もしやすい構造になっています。
木の温もりとシックな色調が作る落ち着いた空間です。
こちらが操舵室。
ちょっと江ノ電とか電車っぽい部屋の構造ですよね。
機器類は同じなんですが、20年の時の差がコンソールの作りに現れているように見えますね。
そんな感じで濃密な1時間を過ごすことができました。
関係者の皆様ありがとうございました。
続いては、実際に船に乗ってみます。
憧れの隅田川航路にこんな形で乗れる日が来るとは。社会人になってよかった……。
ここ日の出桟橋から浅草吾妻橋前に行き、そこからさらに上流へクルーズに出るとのことで乗り通すことに。
ヒミコ型の2番船、ホタルナです。
顔は似ていますが、側面にはカプセルのような突起があるなどエメラルダスと大きく異なっています。
デッキの形状も違います。
ガルウィングドアです。
エメラルダスでは中央にあったカフェスペースが船尾にあり、窓も大きいなと思います。
操舵室はパノラミックウィンドウで囲まれています。
ホタルナのデッキは封鎖されていました。
浅草から利用できるようになるようです。
ということで、出港!
お世話になったエメラルダスを眺めます。
船は後退してから向きを変え、
竹芝桟橋を左手に眺め、隅田川へと進むのでした。
(続く)
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