11月19日、世界トイレの日。
世界には衛生的環境が整っていない人がいるということで、公衆衛生に目を向けようと国連が定めた記念日です。
さて、ブログ読者の中には少し気になっている人もいるでしょう。
"なぜいちいち観光地でトイレをリポートするのか。"と。
顔見知りの読者からよく言われるんです。
確かに観光地に行くたびに建物を見るたびにトイレを記録してはこのブログにチマチマアップロードしてきました。
確かにタブー感も持つ人もいるのでしょう。ただまぁ、旅行レポートならもっと優良なサイトがたくさんあるので気に触るならそちらを見てくださいというところでもあるんですよね。
あるとき「世界のトイレ写真集」という本を読んだんですよ。世界にはいろんなトイレがあるんだよと。排泄という行為は一つなのにその仕方にはさまざまな文化や慣習があって、それに合わせた道具が開発されてきていると。なるほどと思っていたわけですが、実は日本にもユニークなトイレがあるという雑学がよくTwitterでは流れてくるんですよね。しかし少し調べるとそういった施設は無くなっていたりするわけです。
誰もが利用するのに誰も気に留めない、そんな物を真面目に観察してみると何か面白いものが見えてくるのではないかと思っている私は、そうして誰にも記録されず消えていく儚い存在に惚れ、このようになりました。
本来は衛生環境に目を向けようという趣旨ではあるのですが、今回はさらに一歩進み、楽しい空間づくりを知るとともに、その機器の歴史を学んでいきましょう。
トイレの空間作りというのは、非常に贅沢な遊びです。なんたってトイレというのは1番の隠れ場所なわけで、ここにお金をかけるというのは余裕が必要です。
しかしトイレの空間設計にはいろんなメリットがあります。
・隅から隅まで力を入れるということをアピールする
高級な施設などではトイレを豪華にすることで、見た人をあっと驚かせる、その驚きを抜かりなく提供できます。
・遊び心を演出し、話題を提供する
トイレなんかにどうしてこんなに力を入れるのか、というギャップを作って面白さや話題を作ることができます。
・トイレを借りるという動機を購買に結びつける
ドライバーの休憩地点によくあるものです。豪華なトイレを貸してその代わりに買い物をしてもらう、返報性の原理という商売の基本みたいな所でしょうか。
では、いくつか実例をカテゴライズしていきましょう。
展望トイレ
こういうのはユーモアでトイレそのものを売りにしているところが多いですね。「一億円トイレ」と題打って堂々売るところも多いです。
高層建築のトイレには大きな窓を設置しているところが多々あります。そういう中でも、便器の前に設置してしまうという大胆な場所が何箇所かあります。
徳島県の祖谷渓谷の崖っぷちに立っている小便小僧みたいなアートが有名ですが、用を足しながら外を眺めようとするのは人の性なのでしょうか。
北海道札幌市 JR札幌タワーT38
名前の通り38階から市街地を見下ろすトイレ。
開放感をアリにしていますが夜は反射がすごくて自分の顔がよく見えて落ち着かないという。
東京都 大丸東京12階
東京駅や新幹線を眼下に見下ろすので皇居に向かって放つなかなか攻めてるところ。
都内の高層ホテルに複数あるのほか、海ほたる、博多の商業ビル、福岡県の道の駅、鹿児島県、熊本県の展望台……などなど、いろんな場所に設置されているらしい。
やはり話題性というところでは使えるネタなんでしょうね。ところがこのガラス張りタイプ。実用性にやはり難があるところがあるようで。
さすがに窓の外から丸見えになるってことはないようなのですが、プライバシーが気になると言う考えもやはりあるようで。
大丸や札幌ケースだど、窓際とそれ以外の場所にもちゃんと作ってあって、見えたくない人のための場所があったりするんですが、そうした配慮がないとあんまり長続きしないと言うところらしい。
刈谷ハイウェイオアシスとかは中庭に向かってガラス張りなスタイルだったようですが、プライバシー重視に変わってしまったとのこと。
衛生の実用性は日々進化していくもの。遊び心だけではやっていけない儚さもまた魅力であるのです。
コンセプトがユニークなトイレ
見晴らし以外にも、トイレを空間としてユニークにしようという試みは多数あります。
とはいえ、トイレそのものを長居させる空間にすると言うよりは、一休みの間に笑いや驚きを与えて記憶に残そうという感覚が強いなぁと感じます。
目黒雅叙園 再現化粧室
説明不要の豪華さ。
橋のあるトイレという異空間らしさが驚きを誘います。
かつては橋を渡った先にトイレがある仕組みで鯉が泳いでいたようです。
現在はバリアフリー的な観点からか橋の手前に便器が移設されていて、橋を渡る必要がなくなっていました。
サンリオピューロランド 宇宙船トイレ
ピューロランドのトイレは力が入っていて、テーマパークとしての空間とはまた別の世界観がそれぞれ作られているんですよね。森の中とか宇宙船とか。正直これだけでも観光しにきた気分になります。
東京ジョイポリス トイレッツ
きうじをトイレマニアにした伝説のバカゲー。
排尿をスコア化して他の利用者対戦するという、時代が違えばeスポーツと持て囃されたであろう逸品。
(実際、エムズーンはMATAVERSEなんてコンテンツ化にチャレンジしていますし。)
商業的には失敗してしまったようですが、あんなにユニークで面白いゲームは2度と現れないんじゃないかと思います。
セガのゲーセンが売却されGiGOとなったあと、コロナ禍での人口減少が原因か設置店舗ごと消えるケースが後をたたず、絶滅危惧種です。
軽井沢の餅屋、新潟県の渓谷などにユニークな空間づくりをしたものがあるらしい。
秋田のレストランにある枯山水トイレというのが出てくることがありますがあれは廃業したらしい。インフルエンサーさん、ちゃんと裏取りしてほしいですね……。
その他ユニークなものとして面白いのが、小田原城天守閣ですかね、窓があって見晴しは確保しているんですが、外から見るとそれが一切隠されているやつ。
あとはこう言うすごいトイレではないですが、使い勝手や機能性に魅力を感じたものをいくつか紹介しましょう。
北海道の特急列車のトイレです。
列車の中というのは、座席2列分の狭いスペースにトイレを押し込む必要がありますが、なんとここには折りたたみ式のおむつ交換台がついていてものすごく多機能で驚くとともに、これだけ高機能なものを搭載しなくてはならない現代の技術基準の厳しさを実感しました。
多機能になるのはいいことなんですけど、多機能にできないならトイレを設置できないという反動ってあると思うんですよね。こういうものを導入するのは鉄道会社の自助努力によってかなり頑張っているところがあると思っていて、利用者として当たり前だと思ってはいけないなと思います。
あとこれも面白いなと思ったやつで、トイレの個室の中に着替え用の板がついていて、この上に乗って着替えたり、荷物置きとして使えるよ。というやつ。
子供が服を汚れてしまって着替えたりするときに使えるのだとか。要は個室の更衣室として利用するニーズも想定しているというもので、こうなってくると排泄だけでない空間を作っているんだなぁと他機能性を感じました。金のあるところは色々手を入れているんですね。
とはいえ、個室はわりと人生の危機が迫っている人のための空間であって欲しいという思いが、お腹の弱い私の中にはあります。
これは確か高速道路のサービスエリア。
個室の空き状況がライトでわかるというもの。
大を待つ人は大行列になってしまうことが多くて、そうすると側から見て空き具合が分かりにくいんですよね。そういうときに赤青があればどこに行けばいいか一目でわかるというもの。
高速道路ではスピーディに利用できないと命に関わりますからね。独自の進化を遂げているところが多々あるようです。
これは東京タワーの商業施設ですね。SLの機関区を思い出すような扇形の配置が特徴的です。かつては品川駅なんかもこんな配置で、よく魔法陣トイレなんて呼んでいたりしました。
割とデッドスペースが多くなるように感じてしまいますが、この形状のメリットは整列に見栄えをつけているのではありません。この形状はプライバシーを重視した作りなのです。
便器と便器の間に、たとえば百貨店やホテルなど高級なところだとこんなふうに仕切りをつけたりするんですが、仕切りをつけることなく視線を誘導するいい仕掛けだと思います。
この円筒形に便器を配置する設計方法は小学校のトイレ改修なんかにも活用されているらしいんですよね。なるほど確かに後から考えたら信じられないくらい気にするよねぇと。
そんな感じでユニークな環境が作られている一方で、これとは別に便器にも個性があるもので。
いくつかピックアップしてみましょうか。
・筒形タイプ
TOTOの博物館とかいくと見れるらしいのですが、かつてはこういう形の便器が家庭用に設置されていたことがあるらしく、保存された邸宅などでこれを見ることができます。
で、こちらはそんなイメージを元にレトロな施設で使えるように作られたTOTOのu100という製品なのですが、形だけレトロに寄せたゆえか、現在は廃盤となっています。
神社やお寺に多く設置されているほか、大手和風レストランでは標準装備されているとかで…。
雅叙園もかつてはこのタイプを使っていたようですが交換されてしまったようです。
多分ですが、いろんな世代の人が使えるようにって考えると高さを低くする必要があって、そうすると非常に狙いにくいんですよね。いちおう正面に壁はありますが、大人の発射点はこの壁より上なので、下向きに制御しないと狙いを外します。
あとは、壺の底が掃除しにくいって所でしょうか。吐かれたりでもしたら大変そうだなぁと、なんとなく思います。
・朝顔型タイプ
置き型だった筒形に対し、こちらは壁掛け型と呼ばれるタイプの古いもの。形はちょっと違いますが、だいたい丸みを帯びた小さな形をしています。
使える身長が限られていたり、跳ね返りを防止する構造に乏しいので、数を減らしています。
デュシャンの「泉」というアート作品としても有名ですね。
これは伊東の旅館にあったもので、フラッシュ弁すら蛇口というかなり古典的なもの。よくぞ残っていたものだと感心したものです。
こちらも伊東の旅館にあったもの(廃業)
愛嬌があるデザインですが、やはり使いやすさ的には
・壁式タイプ
かなり古いスタイルで、壁に直接用を足すというもの。
近鉄線の駅に多いとされていますが、関東ではほぼ絶滅しているようです。
三浦海岸と鶴見の運動公園にあるとか……?
ちなみに、壁式トイレにFRP製の便器を取り付けた、スターライト壁式便器というものがありますが、きうじはこれを壁式とは認めない派です。
たしかに亜種ではあるけどもでも本当に最低限の仕組みの壁式よりはだいぶリッチじゃないですか?って感想。
またこのようにステンレス製の壁に窪みを作ったタイプを壁式とよぶ愛好家もいますが、これも壁式の亜種としたいタイプです。
壁に壁以上の役割をつけたらそれはもうれっきとした便器なんですよ、と。
他には浅草のアサヒのビルの中にかつて壁式トイレがあったらしいんですが、改修されて消えてしまったみたいですね。
・ガラス張り壁式タイプ
これが本当に国内に実在するもんなのか、気になっているのです。
壁がガラスになっていて水が滝のように流れるしくみになっているものです。
建物の年代からしてバブル期に作られたものが多いようで、見た目の奇抜さを重視している結果、バリアフリーなどの流れで撤去されたり、建物ごと取り壊されるケースが見られます。
恵比寿のものが有名でしたがコロナでもたついているうちに取り壊されてしまい、なかなか都市部には少ないので地方に行かねば出会えないかなとやきもきしています。個人的には奥に坪庭があるタイプが好みなので是非行ってみたいなと思います。徳島県のデザインが特に最高に最低なので面白そうですね。
世田谷の葬儀会場、広島の百貨店(閉店中)、徳島のレストラン、兵庫の公園、富山のショッピングセンター、などなどあるらしい。
なくなったものでは、恵比寿の公園、秋田の道の駅、牛久の旅館などにあったらしい。
そんな感じで、その特性ゆえにユニークながら儚いトイレの世界。
毎日何気なく使っているところにもエピソードあり、時折気にかけてみてはいかがでしょうか。
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