タンコロまつりの展示を紹介していきます。
ここはせっかくなので今回は別枠で。

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模型がずらっと並んでいます。


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「模型で見る江ノ電の車両の歴史」
雑誌やテレビでも取り上げられる有名な江ノ電OB代田良春さんの作品です。

木製の床板と屋根に厚紙で作った車体を貼り合わせて作ってある手作り模型たちがここまで並んで、かつ展示をじっくり眺められるのは珍しいので、ここはしっかり記録しました。

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1形。1902年導入の単車です。ダブルルーフに吹きっさらしの運転台。足回りはドイツから輸入した台車にモーター、制御装置。柳小路に設置された発電所とともに湘南へ電気をもたらしたイノベーターでした。屋根にはビューゲルという集電装置があって畳まれています。


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こちらは大正時代に入ってからの車です。運転台は壁とドアで覆われました。運転士さんは雨を凌げるし、濡れた手で制御器を操作する必要もありません。この頃の電車は通行人を轢かないように救助網の取り付けが義務付けられていました。が、この救助網に市販部品がなかったために苦心したとか。


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1929年導入のタンコロのトップナンバー、101形です。雨宮製作所で製作された車で、屋根の丸みやオデコの鉄板の張り方が108とはちょっと違います。まだおへそライトの頃で製造まもない昭和一桁の姿です。



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1931年、江ノ電開業30周年に前後して華々しく登場した納涼電車。
ブルーの色は諸説あり、有力なものとしては明るいライトブルーとする説と鮮やかなコバルトブルーとする説があります。これはライトブルー派ですね。
これがうまくいって、1936年にはもう2両、ボギー納涼電車が登場します。足回りを使い回したことで有名な車ですね。


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1931年登場の105号です。
「青い江ノ電なんてあったんだ!」って言ってるちびっ子たちがいっぱいいましたね。
これは1950年代前期に短期間塗装されたカラーリングです。連接化が始まる少し前に緑になり始めたらしいですが理由は謎。昔の鵠沼駅や極楽寺駅の駅舎の看板が看板が青かった理由はこの時代の名残とか言われていますね。

108号とデビューした時期は同じなのですが、105は1両だけ路面電車ですらない構造をしていました。
また106〜110が新潟鐵工所、電気品は三菱電機なのに対し、105のメーカーは川崎造船所、電気品は東洋電機。そして国立公文書館に残る図面には広島用寸法・江ノ島用寸法という謎の文言があり、その出自は完全に謎。


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隣には1956年登場の301号です。電車の大型化に向けて、タンコロを改造した連結車200形と連接車301号がテストされ、江ノ電は連接車の多い路線となりました。
ポール集電がZパンタ集電に変わるのが1964年なのでそれまでの初期の姿です。


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1957年登場の502号です。
タンコロから改造された302、303と一緒に登場した車体新造車。足回りは廃車になった木造車ものを流用しています。新造車にはクロスシートやテープレコーダーによる案内放送など盛り込み、江ノ電のパンフレットで大々的に宣伝されました。
しかし背伸びをしすぎたかだんだん標準車両と同じようにグレードダウンしていき、普通の電車として走るようになります。引退は2002年、20形と交代する形でした。


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1971年に上田丸子電鉄から購入した800形。
もともとは1948年に山梨交通モハ7という軌道用車両として製造され、山梨交通電車線や上田丸子電鉄丸子線の路線廃止によって失業を続け、甲種貨物で湘南貨物駅(今の湘南アイパークあたりにあった貨物駅)までやってきたという経歴を持ちます。最初は2扉で乗り降りがしにくいことから嫌われてしまいましたが、3扉化されてからは一番大きな車体を使って大活躍しました。
模型はタンコロの廃品のライト類を取り付けられた1つ前灯に、小田急から譲り受けたドアを増設して3扉になった姿です。


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1979年に登場した新車1000形。これまで中古車を買い漁ってきたものの、1970年代の路面電車の廃止ラッシュを受けて中古車は枯渇状態。とうとう新車の製造を決意します。
さて、江ノ電の新車といえば1957年の502が浮かびますが、これは車体を新造したものの床下は中古品。では完全な新品はというと、1931年の106形以来48年ぶりとなりました。
しかし特殊かつ小ロットな電車を作ってくれるメーカーがなくて苦労したそうです。ベースは同じメーカーで同世代の京急800形で、随所に類似点を感じます。そんな京急のダルマが引退した今も新型車グループとして第一線で活躍する電車です。



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1997年、開業95周年を受けて製造されたのが10形です。バブルが終わり、落ち込む観光需要を取り戻そうとオリエント急行をイメージした奇抜なデザインで登場しました。中身は2000形と同じなので、そろそろ2000に続いて車体更新が噂される同車。姿形が変わることあるんでしょうかね。


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こちらは1982年に登場した初の全面広告車。車体は10形と交代して引退した302号車ですね。サンオイルという日焼け止めの広告で茶色に塗られて走ったのです。以来、江ノ電は走る広告塔として注目されカラフルな電車が走っていました……というのもいまは昔。昔は景気がよかった……。


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304号チョコ電
2002年、開業100周年を記念して登場した電車で、戦時中のカラーリングをリバイバルしたもので、その昔800形で行われたチョコ電とはドアの塗り分けが違うなどこっちの方が史実に忠実に塗り分けられています。その後100周年が終わっても延長して運転され、2005年までこの色で走りました。


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2005年のさよなら運転の時の304号。老朽化により引退が決まると、直前にチョコ電カラーから黄色と緑色に塗り直されましたが、それまでとは塗り分け線が違っておでこの塗り分け線が少し上になったんですよね。だから2005年仕様というわけです。


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現在も走る305号、夜行高速バスの運行が始まった2006年頃の広告を取り付けています。
ヘッドマークには2010年の全線開業100周年を掲示していますね。

今回はこのように120年間の電車をずらっと並べる壮大な展示となっていました。
私が小さい頃は模型がレイアウトをぐるぐる回っていて、304だかなんかの発生品と思われるマスコンを改造したパワートラックを使って運転体験ができたので小さい頃はよくお世話になりました。
ここ数年模型たちは走行しておらず、整備をしていないとのことで今回は車両展示することになったそう。
お世話になっていた展示だけに、模型をファンの手でなんとかできないものかと思ったりもするのですが、手作りの紙製の模型という非常に繊細で味わいのある品を、安易に触ることも難しいなと思いまして。貴重な模型の整備、なんか持続的でいいアイデアないものでしょうか。