ついに、藤沢駅のパタパタ表示器が撤去されたとの情報が入ってきました。
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2019年12月18日の終電後に撤去された模様。

私は2018年夏ごろから、江ノ電に残るパタパタ表示器の記録をしてきました。
そしてその結果を、2019年8月に刊行された「年刊イナシュウvol.02」に寄稿していました。



そしたらこの度、その「年刊イナシュウ」も完売したとのお話があり、記事を読む方法が鎌倉市の図書館など限られた方法になってしまいました。


寄稿という乗りかかっただけの人間ながら、同人誌やコミュニティの在り方みたいなのは
私自身でもいろいろと思うところがあって考えたのですが、

完売を機に、私の寄稿した「動かぬパタパタ 藤沢駅反転フラップ式発車案内装置について」という記事を、勝手ながらブログ上で公開することにしました。

当時、締め切りに追われながら書いたので、不十分なところや、内部の人間でないためわからないところをなんとなく推測で書いたところがありますが、そこはご愛嬌ということでよろしくお願いします。

では、どうぞ。



「動かぬパタパタ 藤沢駅反転フラップ式発車案内装置について」

 

序論

藤沢駅乗車ホームには、次に発車する列車の両数と行先を案内するために、反転フラップ式の発車案内装置が設置されている。

この装置の特徴に、稼働率の低さがある。類似のものとして京急川崎駅や函館空港でも反転フラップ式の案内装置が稼働しているが、藤沢駅を1日に発車する86本の列車のうち、「鎌倉」以外の行先を表示する列車は定期で2本、不定期でも1本程度しか存在しなため、この発車案内装置は1日で2周しか回転しない。

本研究は、旅客案内装置の動作メカニズムを解明するとともに、その全容を後世に残し、将来のコンテンツ制作の資料とするものである。

 

1 装置の説明

1-1         発車案内装置の役割

発車案内装置とは、藤沢駅の乗車ホームに設置された旅客案内装置である。

両数と行先をそれぞれ反転フラップで表示する仕組みになっており、側面に銘鈑の取り外された跡があるが、前面のステッカーから日本信号製であることがわかる。


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装置外観

 

1-2         発車案内装置の設置時期  

インターネット上の動画や画像を見ると、電車を綺麗に撮影するために降車ホームで撮影された画像や、電車に接近して撮影した画像が多く、案内装置が写りこんでいることが少ない。動画などを見ていると、1980年頃までは未設置であったと推測される。

 

2 装置の構造(両数編)

2-1         11コマの内訳

この装置の作動には一定の条件があり、いくつかの場合において説明する。

反転フラップは両数と11コマが存在し、両数については、1から6までの数字と、空白が5コマ存在する。6両編成という両数は存在しないが、かつて600形などの3扉車両が走行していた頃、鎌倉駅にて足元に1,2,4,6といった乗車口表示を掲示して、車種ごとに整列乗車の案内を行っていた経緯があり、そのような案内が藤沢駅でも行われていた可能性が指摘されている。

2-2         日中の両数変更

日中では、電車発車と同時に作動する。江ノ島駅と稲村ヶ崎駅の発車ベルには、両数に応じて異なるスイッチが存在する。このスイッチを使い分けることで、次に藤沢を発車する列車の両数が決定し、先発が藤沢を発車後に表示を切り替えるようになっているようである。遅延でボタンを押すのが遅れた場合は、操作が行われるまで空白になるようである。

 

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江ノ島駅発車ベル 両数ごとに箱が異なる

 

2-3         深夜の両数変更(24分間隔)

2149分発極楽寺行の発車後、2202分の発車後から、24分間隔での運行になる。この場合、藤沢駅を発車した段階で対向列車が稲村ケ崎にいるため、江ノ島駅の発車ベルと両数が連動できない。このため、案内装置が列車運行に連動せず作動するアルゴリズムが存在すると考えられる。

ただし、稲村ヶ崎駅にも鎌倉駅の旅客案内装置操作用のスイッチが存在するため、そこで操作している可能性は排除しきれていない。

定刻であれば装置は遅延なく次列車の両数を表示するが、近日では遅延が多いためにその調査の方法も改める必要があった。2149分発の発車が遅延すると、両数は不定状態になる。その後両数が表示されたため、江ノ島駅では2149分まで手動の両数操作を行っていると判断することが出来る。それ以降の時間帯では、列車発車より前に両数が変更になるケースなどが見られた。

 

2-4         試運転走行時の両数


試運転列車が入線する際の表示について、平成301211日夜に実施された2003Fリニューアル工事後の試運転で確認した。その結果、両数は2両の試運転列車に対し4両の表示であった。一方で、平成31327日の2003Fの試運転では、両数不定で運転され、試運転列車発車後はすみやかに両数が4両に切り替わった。

 

2-5         江ノ島逆線出発時の両数

江ノ島駅では、前日の遅延を回復する場合、そして区間運転を行う場合に、通常使用する1番線ではなく、通常鎌倉方面行電車に使用する2番線から藤沢行電車を発車させる場合がある。この際の両数表示がどうなるか調査した。なお、筆者はニワカ夜型オタクであるため、早朝始発電車からの観察ではなく、平成307月の小動神社天王祭による藤沢~江ノ島 区間運転で検証した。

発車ベルは2番ホームのものを使用していたため、空白となると予想していたが、実際のところは問題なく4両で動作していた。これがなぜそうなるかは不明である。デフォルト表示で4両になるとも考えにくいが、軌道回路などで両数を検知する仕組みが存在するのだろうか。詳しい方に是非お聞きしたい。


(加筆)
両数によって停止位置の違う駅で信号の制御を行うため、両数の検知は必要で、これが可能であると推測ではあるが考えている。
交換駅などには、2両、4両など記した箱が存在し、これが位置を検知するのに何らかの役割を果たしていると推測している。(以下画像は藤沢駅のもの)
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3 装置の構造(行先編)

3-1         行先11コマの中身(写真)

行先については、鎌倉、江ノ島、稲村ヶ崎、長谷、極楽寺、鎌倉(前部2両貸切)、回送、そして4コマの空白がある。各コマの柄についてはのちの項目で示す。

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1コマ目 鎌倉 (通常の状態)

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2コマ目 江ノ島(1日1本 23時49分発)

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3コマ目 稲村ケ崎(定期列車なし) 

 

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 4コマ目 極楽寺(1日1本 21時49分発)

 

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 5コマ目 長谷(定期列車なし)

 

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6コマ目 鎌倉(前部2両貸切)(遠足・ロケ・行事などで不定期に走行)

 

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7コマ目 回送 (試運転列車などで使用)

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8コマ目~11コマ目 空白(使用せず)

3-2         動作の仕組み

行先の変更は列車の発車前後に切り替わることがわかった。出発信号が赤に切り替わる前から転換が行われる場合があり、逆に列車が発車しても切り替わらないケースがあって作動順序もバラバラであった。したがって両数とは連動しない別のアルゴリズムがあると考えられる。

 

3-3         行先変更方法の推定

行先表示がどのタイミングで動作するのかを調べるために、極楽寺行列車の前後の時間帯の列車の動きとパタパタの作動タイミングを動画撮影によって検証した。

事実として分かったことは2点である。一点は、行先パタパタの作動時間が列車の発車動作に依存しないということである。戸閉前に回転することもあれば、発車後しばらくしてから回転することもあった。

もう一点は、パタパタの動作と同時に、大原さやかさんによる案内放送が流されることである。放送中に列車位置情報モニターを確認すると、放送は電車が湘南海岸公園に到着する時と、柳小路を発車する時に流れることが分かり、湘南海岸公園に在線する時の放送の直前にパタパタが回転することが分かった。以上より、この行先パタパタは先発列車の発車に依存せず、後発列車の接近状況に依存して動作するのではないか、と考えることが出来る。

 

(加筆・どうやらイレギュラーな操作は手動操作が行われているようである。)


3-4         貸切列車・試運転列車での表示

平成31223日、貸切列車「北陸うまいもの号」が、鎌倉~藤沢の往復で運転された。このとき、貴重になった貸切列車で「鎌倉(前部2両貸切)」の表示が期待されていた。しかし実際にパタパタを見ると通常の鎌倉行の案内が行われ、設置されたばかりの位置情報モニターには貸切列車である旨が表示される結果となった。加えて、駅係員による声掛けや放送による案内が行われた。かつては貸切の表示がパタパタ装置でも行われていたようで、行先変更が何らかの人為的な操作を必要としていることが推測できる。

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4両 回送」の表示と2003Fの試運転列車

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「 両 回送」の表示と2003Fの試運転列車

江ノ島駅での発車ベルを鳴らす時間が短かったとの証言がある

 

平成301211日および平成31327日に行われた2003Fの試運転では、試運転という掲示がされた。試運転列車については正確に表示がされていることがわかる。

 

4 おまけ・鎌倉駅のLED(ブログ用に追記)

鎌倉駅にも旅客案内表示器が設置されているが、これは藤沢駅と異なりLEDによる電光表示となっている。銘鈑によると平成116月に設置されたものらしい。

こちらも構造は藤沢駅のものに似ているが、発車番線を表示できる機構があり、これが藤沢駅と異なる。なお令和元年の交互発着では、発車番線・両数ともに表示なしで、お手製の旅客案内装置を用いた旅客案内が行われた。


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鎌倉駅の表示器。線路が複数あるため、のりば表示がある。

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英語表示も交互に行われていたが、表示時間は日本語の方が長かった。
定量的な数値を計測しなかったのが悔やまれる。

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平成11年6月 交通システム電機株式会社製
20年半の生涯であった。


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2018年GWの交互発着時に使用された手製の案内表示器。
裏のスイッチによってライトを切り替える方式である。

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鎌倉駅の装置(GW交互発着時の 両数・番線ともに不定の状態)


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稲村ヶ崎駅の発車ボタン。
出発信号の点灯と発車ブザーを鳴らすスイッチがあり、表示器の両数を決定する。

 



5 おわりに

 結論として、この装置は、次発列車の行先と両数を記憶し、先発列車発車の段階で両数を切り替え、次発列車が江ノ島を出たころに行先を切り替える機構が存在する、という仮説を立てるに至った。もちろん、この仮説は定量的評価が不十分であり、さらなる検証が必要であることは言うまでもない。

江ノ電では、各駅に位置情報を提供するモニターが各駅に設置され、平成301222日より稼働を開始している。より詳細な情報が提供できるため、いよいよパタパタもお役御免と予想されていた。しかし、藤沢駅改修工事のイメージパースでは未だにパタパタが居座っているほか、支柱が再塗装されるなど、小田急湘南ゲートの開業以降も変化が見られない。

新しい旅客案内サービスは、駅に設置された装置が電車からのビーコンを受け取っているものと推測され、軌道回路によるパタパタとは動作タイミングが明らかに異なっているほか、まだ遅延などイレギュラーな運用に対応しきれていないことが多いようで、在線情況により確実に動作するパタパタの撤去はもう少し先になるかもしれない。しかし、位置情報提供が円滑になれば、将来的にこの装置は撤去されることが十分に予想できる。早めの記録を勧めたい。

最後に、本研究にあたり情報を提供して下さった江ノ電ファンの方々に感謝する。


(初出・年刊イナシュウ vol.02)
 


以下、加筆

 江ノ電藤沢駅の行先表示器について、試運転や貸切などイレギュラーな運用を行う場合には、駅係員による手動操作で変更ができるようである。信号機や転轍機なども、通常は自動操作を行い、必要に応じて手動操作に切り替えることが出来るようになっているため、この表示器についても同様に、自動で使用するモードと手動で使用する場合を切り替えて使用することが出来ると推測する。
ただし、行先については前述のとおり1日に2度しか切り替わらないため、すべて手動操作としている可能性も考えられる。


 最後に、紙面では照会できなかった藤沢駅のパタパタの動作を、映像で紹介する。京浜急行などで使用されているものよりも動きがゆっくりで、パタパタと板がめくれるたびに重めの音がすることがわかる。






2019年12月22加筆

2019年12月18日終電後に撤去された表示器の跡地を見に行ってきた。
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表示器は台座ごと撤去されていた。


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鎌倉駅についても同様で、こちらは改良工事も半ばであることから、
今後屋根の整備も行われ、痕跡は姿を消すと考えられる。